「味方」と思ってくれない生徒

もう少し具体的に言うと

・理解したと偽装する生徒

もっと具体的に言うと

・答え合わせの際、答えをこっそり書き直しマルをつける生徒

要するに

私に対して、ウソを吐く生徒

今、実際にいる私の生徒

 

バイトで行ってる、個別指導の生徒です

女子高生。無口。私に対しては口答えしませんが(後述)、相手によっては全て反論から入る感じ。場合によっては、すごく自分勝手でわがままに映ってしまうかもしれない。下から卑屈に見上げる感じが、変に印象的な子です

 

自分の前にふでばこを置き、不自然に前屈みに座り、テキストやノートを隠すように問題を解いていく。バイト先の個別指導は対面式に座るのですが、他の生徒は皆、ふでばこは横に置きます。邪魔だから

 

そして、個別指導のため、一人の生徒にかかりきりになるわけに行かないので、各自マル付けも自分で行うのですが、私が他の生徒を見ている間に必ず答えを書き直すのです

 

下からのぞき見るような感じで私の視線を確認し、不自然に持った消しゴムで自分の解答を消し、シャーペンに持ち替え、書き直して赤いボールペンに持ち替える

 

出会いは中1のとき

 

私は、その生徒を中1の時から担当しています。初めて会ったときから、既にその「思考」は彼女にこびりついていました。根が深いことはすぐに分かった

隠しながらやるあたり、自分でも不正であることは分かっている。とてもデリケートな問題です。中学生になって環境が変わって・・・暫く様子を見つつ、気持ちが安定していそうな時を見計らって、やんわりと指摘してきました。「あっれ?さっきそこ、そう書いてなくない?」

 

中2になり、気持ちが緩み出す頃、宿題もやってこなくなった。理由も、理由にならない事をもっともらしく並べ立てる

 

正直、私の中にも葛藤がありました。私塾をしている私は、本当の意味で「プロ」です。個別指導は、ほとんどが大学生のアルバイト。「金をもらっている以上プロ」論もありますが、素人の彼らに、本当の意味でのプロの指導を求めるのは実際酷な話です。(プロのおまえが何で大学生と一緒にバイトしてんだって話は、いずれまた)

 

同一労働同一賃金。大学生バイトの時給と刺して変わらない単価で、「思考の矯正」までやるのか。私は聖人君子ではありません。「教育」「子どものため」そんな錦の御旗を掲げれば、指導者のいかなる犠牲も厭わない、そんな思考は大反対です。だから塾講バイトはブラックって言われるんだよ

 

しかし、私のプロ意識が勝ちました。クレームきたら、それはそれ。一度、時間割いて話すしかない

 

怒鳴り込まれるの覚悟、それでも・・・

 

中3になる前に、授業を少し潰して話をしました。怒ったり咎めたりはしません

・私が認識している現状、宿題をやらない・答えを書き直す
・それにより起こる弊害
・そこから必然的に導かれる結果

真っ向から彼女を否定しません。大人から見れば理由にならない理由でも、彼女なりの正当性があるから。貸借対照表のように、左右バランスをとって説明します。でも、最終的に赤字黒字になるように、中身に大きく違いがあることを理解してもらいます。・・・勿論、貸借対照表なんて用語は出しませんけど笑

 

彼女は目に涙を溜めていました。一切反論しませんでした。後で爆発するかな・・・親が親だから怒鳴り込んでくるかしら・・・室長、スマン・・・まぁそうなったらごめんなさい・・・色々覚悟しました苦笑

 

その後、彼女は宿題をやって来るようになり、答えを書き直すこともしなくなりました。せいぜい30点しか採れなかった英語も、50オーバーをキープし、現在完了形・関係代名詞は、彼女の加点分野になりました。2年かけて、私はやっと、彼女の「味方」になれたのです

他の教科が振わず、高校入試は私立単願でしたが、一応合格できました。彼女の熱い指名により、高校に入ってからも塾に通い続けることになりました。こんな経緯があるので、彼女は私に対し口答えすることもなく、素直に自分の弱みを見せてくれるようになったのでした

 

 

ここまでは、絵に描いたようなサクセスストーリーです

彼女が、塾での勉強をきっかけに、周りに対して素直になり、勉強だけでない本当の「味方」をつくることが出来るようになる。塾も、良い指導がリピートに繋がり、収益が上がり続ける。完璧です。非の打ち所がない!

 

でも、甘かった

 

私が一番最初に感じた「根の深さ」

それは、私が思っていたよりもずっと深かった。涙を溜めて唇をかみしめる程度の悔しさでは、絶つことが出来なかったようです

ノートを隠すようにマル付けをしていた中1の幼い彼女が、そのまま成長した彼女になって、私の前に再現されました。愕然としました。幼さが抜け、大人っぽさが身につき、それが一層、彼女の卑屈さを増幅させている感じです

 

高校というまっさらな環境に投げ込まれ、再び、彼女にとって「敵」に囲まれることになり、なんとしてでも自分を取り繕う必要性に駆られてしまったのでしょうか。「弱みを見せられない」私には、当然、彼女の本当の心理を知ることはできません

 

原因って、なんだろう?

 

再発した原因ではなく、その根っこが生える原因

彼女の、こびりついた「思考」のもと

 

・・・もちろん、私は彼女の育った環境なんて知りません
教育評論家でも教育心理学の専門家でもありません

ここで考えたところで答えなんてでないでしょう。それでも少し考えられるかな・・・と思ったのは、私の子どもの頃と、彼女が酷似しているからです

 

私のことなのでさらっと書きます。中学受験出身、取り繕う思考は、彼女よりも早めに出ました。でも、マル付けは自分でやるシステムではなかったので、手っ取り早くカンニングをしていました。書きそびれましたが、彼女も出会った頃はカンニングをしていました。今は解答を取り上げ、マル付けの際渡すシステムに変えました

しかし、毎度カンニングするわけにもいかず、毎週のテストは散々。それでも、毎日のように滝行のごとく情報(授業)が降ってくるため、偏差値60オーバーはクリアできてました。そんな時代です。中学に上がってからは、塾の回答を持ち出しました

 

自分を取り繕う思考

自分の現状をさらけ出せない思考

 

ズバリ、第一次社会に原因があると思うのです
生まれて最初の社会、つまり家族です

・ウチとソトがはっきり分かれている親
・「こうあるべき」が強い親
・滅多なことでは褒めない親

 

早いうちにウチとソトを意識すると、ソトに対しての警戒感が強くなり、人見知りの傾向が強くなるように思います。ウチとソトを隔てる壁が分厚く高くなる

「こうあるべき」が強い親の元にいると、そうでない自分をなんとかしなければならなくなります。隠さなければいけません

子どもは褒めてもらいたい生き物です。褒めてもらえないなら、褒めてもらえるレベルまで、ウソを重ねて行かざるを得ないのです

 

念のためもう一度申し上げますが、私は専門家ではありません。ここに上げた例が全てではないし、この例によって必ずこうなる、というものでもありません

ただ、私の親がそうであり、彼女の親が私の親に似た雰囲気でした

 

問題は成績じゃない。この先がもっと怖い

 

言うまでも無いことです

 

学校の成績なんて、一時のこと
繕う思考の怖さは、むしろその後に響くことです

 

現状を教えてくれれば、その対応策を用意できる
現状を変える方法を伝えられる

でも、現状を話さないので、周りも手の出しようがないのです

 

「こうあるべき」なのになっていなくて、ソトの人にそれを見られるのが怖い。褒めるレベルに達していないモノは、一蹴される、それが怖い

もちろん、周りにいるみんなが手を差し伸べてくれるわけではない、しかし、ウチとソトの隔たりがあまりにも大きく、その中にいる手を差し伸べたいと思っている人に気づけない

仮に気づけても、その人に一蹴されるのが怖い。自分に好意的に接してくれる人なら、なおさら出来ない

 

彼女の思考も分かるし、なんとか現状を変えたいという周りの気持ちも分かる。どちらの気持ちもわかるのに、現状を打開できない自分が情けないです。「話してくれればいいのに」って思う私の周りの方にも、なんだか申し訳なくなってきたぞ((

 

今後、何かできるんだろうか

 

コレですよね

今年の四月から塾の方針が変わり、1対2から1対3になりました。一人に割ける時間が圧倒的に少なくなった。しかも、何を思ったのか、80分の授業が50×2に変わり、生徒によっては×2の曜日をばらけさせるという・・・

時間が突然派手に短くなり、しかも3人。余計な話などできないです、他の2人の授業に支障が出る

 

抽象的な表現ではありますが、根っこの育ってしまった時間と大きさ、それに見合うだけの、時間や労力、インパクトが必要なのでしょう

長い人生の中で、一瞬すれ違うような私には、出来ることが限られているのかな・・・とも思うわけです。逃げるのかよ!と思われてしまうのですが、授業の前後や休憩なんて時間ありませんし、前述のように、講師が何もかも犠牲になるのはあるべき姿ではありません

 

また、彼女がもう高3であることもあります。ほぼ小6の中1に言うのと、ほぼ大学生の高3に言うのではまるで違う。完成されつつある彼女の思考回路を、いまさら週1、50分しか関わらない私が何か出来るかって言ったら、現実的じゃない

 

原点に戻る。私は英語指導担当

 

なんとも締まりの悪い最後になってしまいますが、私に出来ることと言ったら・・・

彼女は英語を学びに来ている。英文を少しでも読めるように力をつけさせて、彼女の内なる自信に繋げられるよう、地道に指導を続けることでしょうか

 

私立単願だったので、高校のレベルも高くはありません。おそらく大学は無理、専門に行くのだと思います。残された時間で、義務教育レベルの英語をしっかり身につけさせ、資格でも取ろうという気になったとき、その土台を準備させてあげるのが精一杯な気がします

 

長期休暇も終わり、また授業が始まります。
ここに書くことで、私なりに頭の中が整理できました。残ったわずかな時間ですが、私の前にあるやるべき事を淡々と進めていこうと思います。

ここまでお付き合いいただいて、本当にありがとうございます

コメントを残す